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人生の段取り力

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先日、本棚を整理していたら懐かしいものが出てきました。
ちょうど10年前に「致知」という月刊誌の取材を受け〝致知髄想〟というコラムに記載して頂きました。それ以降、毎月愛読しています。
そのコラムに一年間掲載された中からいくつかのものが翌年1月に発刊される〝抜筆のつづり〟という小雑誌にも取り上げられます。
ありがたいことにその雑誌にも載せて頂きました。
前のレストラン時代でのシェフブログでも一度紹介いたしましたが、今回改めて紹介したいと思います。
 
 
「人生の段取り力」
 
三重県・津市の中心街から車で約に20分、小高い丘の中腹にフレンチレストラン「ラ・パルム・ドール」を開店したのは2001年のことです。
それまで地元のリゾートホテルの料理長として、当時の人気番組『料理の鉄人』に出演するなど、一見料理人として華々しく活躍しているかのようでした。
しかし、実際は管理職的な仕事が増え、現場から遠ざかっていくばかり。30代後半だった私は、自分の店を持つなら今しかないと考え、独立に踏み切りました。
出店に際し、大都市の駅ビルや百貨店からもいくつかオファーをいただきましたが結果的にお断りしました。
複合施設の一角では、そこの景気に店の経営が左右されてしまいます。店が繁盛するのも衰退するのも、すべては自分たちの腕次第。
お客様には何かのついでではなく、この店を目掛けて来て欲しい。そういう場所で勝負をしたいと思ったのです。
ありがたいことに、不況と言われる昨今もスタッフ15名で忙しい毎日を過ごしています。
「肉が焼きあがりました!」「付け合わせができました!」。
同時に他のテーブルのオーダーも並行して進めていきます。すべてはフィニッシュから考えて、5秒10秒の単位で逆算して手際よく進めていかなければなりません。一方、ランチの営業をしながら夜の営業で必要なものの仕込みをし、週末の特別メニューで必要な材料を調達する。さらにブライダルのような大きな宴席がある場合は、それに向けての準備も進めていきます。
私は現場で仕事に追われることはいいことであり、むしろそのくらいでなければ活気も生まれないし、いい料理は作れないと思っています。
しかし準備不足で、これもない、あれもない、なんであれがないんだ、という追われ方をしたら絶対にいい料理はできません。
料理はすべて段取り次第。そして同時に私たちの人生もまた、段取り力によって仕上がりが異なってくると思うのです。
これはおそらく母の最期の影響でしょう。母は私が14歳の時に突然の交通事故で亡くなりました。幼少の頃に両親が離婚し、母と2人で生きてきた私にとってそれは言葉にできないほど大きな衝撃でした。その後、再婚していた父の家庭に引き取られた私は、地元では有名な「不良少年」として学生時代を過ごしました。
もちろん、自分で人生の幕引きを決めることはできません。しかしだからこそ、漠然と人生を過ごし、最期を迫られた時、「あれもしたかった」「これもしたかった」「なぜああしなかったのか」と後悔はしたくないと思うのです。
高校卒業後、料理の道に進んだ私は、一旦やると決めた以上、中途半端な三流料理人で終わりたくない。一流のシェフになってみせると夢を抱きました。
そして、「そのためには、まず小さな店でいいから、30歳までにシェフ(料理長)と呼ばれる立場になろう」、そして「そのために、最初に就職したホテルの同世代の仲間の中で
〝後藤が一番仕事ができる〟と認められる存在になろう」という目標を立て一つひとつクリアにしていこうと思いました。
この夢に対する目標設定が人生の段取りであり、ここを明確にすると、一つの目標をクリアするためにどのくらいの期間で、どこが踏ん張りどころなのかも自然と見えてきます。
例えば、20代後半に経験したフランスの修行時代に大怪我をしたことがありました。もちろん休養を取ることも可能だったと思います。
しかし、ここで長期戦線離脱してしまってはフランスに来た意味もないし、「30歳までに料理長」という目標に間に合わないと思い、包帯をぐるぐる巻きにしながら調理場にたち続けました。
最近の若い人たちを見ていると、この「自分の人生の段取りを調えていく」という部分が非常に弱いように感じることがあります。
嫌なことがあり辛くなると、その時の感情ですぐやめてしまう。もちろん私も下積み時代は辛い、やめたいことは日常茶飯でした。しかし、数ヶ月で尻尾を巻いて逃げては格好が悪い。何より、調理師学校へ行かせてくれた親に申し訳ないという気持ちが踏み留まらせました。
本来料理とは、食べてもらう人に喜んでもらうために作るものであり、その作り手を志す人間が親や身近な人を安心させることができなくて、どうして見ず知らずのお客様を喜ばせることができるでしょうか。
また、下積み時代の主な仕事といえば裏方、要するに掃除や仕込み、まかないづくりなどの仕事です。
多くの人は「面倒くさいな」と思ってしまいますが、まだ自由にできる裁量がない分、どこで自分の工夫を凝らすかといったら裏方しかないのです。
そして、この裏方の仕事に丹精を込めることがそのままの料理の基礎となり、「あいつの仕事は丁寧だ」という周囲への評価へ繋がっていきます。
すべての料理人がシェフになれるわけではなく、またすべてのシェフがオーナーシェフになれるわけでもありません。
なれたとしても、「成功した」といわれる人間は本当に一握り。料理同様、人生もつくりあげていくものであり、そのつくり手は自分です。
今の私の夢はこの場所で「ラ・パルム・ドール」を20年続け、「成功した」と自他共に認められて料理人人生を終えることです。その日に向けて、多くの人たちに支えながら一つひとつの目標をクリアにしていきたいと思っています。
 

 


 
致知「致知隋想」 2019年10月号



まだまだ一つの成功と自他とも認められるまでには道半ばです。29年前生まれて10ヶ月の子供と妻を残して渡仏した日が1990年9月30日。
台風で嵐の日でした。早いものでその息子も今年30歳です。
怪我で残念ながらこの5月にラグビー選手を引退しました。5度目の手術で現在、入院中ですがよく頑張ったと思います。奇しくもラグビーW杯が只今、日本で開催中です。前回のリオデジャネイロ五輪では、7人制ラグビーの日本代表にも選ばれていましたが、大会直前での大怪我で出場できませんでした。
しかし、その経験は必ず今後の人生において生かされていくと思っています。自分自身もそうでしたが、30歳というのは、人生のターニングポイントだと実感しています。
人は誰でも可能性の卵を持っています。その殻を破るのは自分しかいないのです。息子にもうちのスタッフにも自分の殻を破っていろんなことに挑戦していってもらいたいと真剣に思っています!!
 
月刊「致知」の10月号のテーマは
「情熱にまさる能力なし」 です。
そのテーマには次回触れるようにしましょう。

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